今日、コロナウイルスの影響によるテレワークの広がりと共に、ハンコの廃止が行政を中心に積極的に進められています。本記事では現在の日本を取り巻くハンコ廃止の流れと、ハンコ廃止による利点や、ハンコに代わって電子署名サービスを利用するメリットを紹介します。
ハンコ廃止は行政も開始
2020年9月に河野太郎氏が行政改革担当大臣に就任してから、にわかに脱ハンコ文化の動きが加速し始めました。河野行革相は、各種の行政手続きにおける実に99%を占める、約15,000件もの手続きについて押印を廃止すると宣言しました。
これによって、出生届や死亡届をはじめ、転入・転出届、確定申告、学校と保護者間における文書連絡のほか、さらには婚姻届や離婚届といった、身近な手続きにおいて将来的には押印の必要がなくなります。
ここで押印が不要となる手続きの特徴は、そこで使用される印鑑が、印鑑登録のされていないいわゆる「認め印」でよい手続きであることです。
押印は元々、その書類を申請したのが本人の意思によるものであることを確認するため、ひいては本人証明のために行うものです。
しかし現実問題としては、簡単に入手できる認め印では、厳密に言えばその法的証拠能力は万全ではありません。
実際に役所の手続きなどでも、本人確認は免許証や保険証などの身分証明書の確認などに頼るのが通例で、押印はあくまで補助的なもの、もしくは形式的なものであることがほとんどでしょう。
つまり、認め印でよいとされる書類への押印は、法的な証拠能力が乏しい形式的なものに過ぎないのだから、なくしても特に支障はないと判断されたのです。
一般国民にとっても、ほとんどの手続きから押印というひと手間が排除されることは、地味にありがたい処置だと感じられるのではないでしょうか。
さて、99%の行政手続きでハンコの利用が撤廃される一方で、逆に気になってくるのが、押印が引き続き必要とされる「1%」の内訳です。
この1%に含められるのは、現状において認め印の使用が許されない手続きです。言い換えれば、自治体や法務局に印鑑登録された「実印」が必須である、極めて重要な手続きは押印の使用が続けられるということになります。
たとえば、法人登記の手続きや住宅ローンの申請、自動車の新規登録、銀行への届け出などがこれに当たります。つまり、今後ハンコは、ここぞという重要な契約の場面でのみ使うことになるのです。
政府は押印の廃止を2021年から施行するとしていますが、それまでの手続きについても押印が廃止される予定の手続きは基本的に押印なしでも受け付けるとしています。この政府の動きに呼応して、すでにさまざまな地域の自治体が押印の撤廃に向けて着々と準備を進めています。
ハンコ廃止は大企業も推進
ハンコ廃止の動きは、民間企業にも広がりを見せています。たとえば、インターネット関連事業を展開するGMOインターネット株式会社は2020年4月、政府によるハンコ廃止の取り組みが本格化するのに先駆けて、グループ内での印鑑手続きの完全撤廃を決定しました。
これはコロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークへの移行を進める中で、書類にハンコを押すためだけに出社しないといけない場合があることを鑑みてのことです。
こうしたハンコ廃止の動きはGMOに留まらず、「メルカリ」や「ヤフー」、「LINE」、「パナソニック」など、その他の企業にも続々と広がってきています。
傾向としては、いきなり完全撤廃するのではなく、できるところを徐々に減らすことから始めている企業が多いようです。
GMOは今後ハンコの廃止を進める事業主の参考用にと、ハンコ廃止の情報を取り纏めたリンク集を公開しています。今後、押印が必要な業務の撤廃や削減を進めるにあたっては、他の企業の先例は大いに役立つでしょう。
ハンコ廃止で利用が進む電子署名サービス
ハンコの廃止は、各種業務や手続きのデジタル化の動きと並行しています。そして、それに伴って、にわかにその重要性を増しているのが、電子的な印鑑のような機能を持つ電子署名の活用です。
電子署名とは何か
電子署名とは、インターネットなどの電子上で文書を交わす際に、その文書が正式なものであることを厳に証明するために利用されるものです。
電子署名は、「その電子文書を作成した個人や法人が、その名義者本人であること」、そして「その電子文書が改ざんされたものではないこと」を示すために用いられます。
いわば、電子署名は、これまで紙の書類で使用してきた自筆のサインや押印の役割を引き継いだものであるといえるでしょう。携帯電話のキャリア契約などを店頭で行った際に、タブレット端末に表示された契約書にタッチペンでサインしたことを思い出す人もいるかもしれません。
電子署名も、たしかに広義の意味で言えば、「電子サイン」の一種ではあります。しかし、タブレット端末にタッチペンでサインすることを印鑑における「認め印」に例えるならば、「電子署名」とは「実印」に相当する強力な法的証明能力を持つことに特徴があります。
関連リンク:
電子署名は認証局型と立会人型
電子署名には、認証局型の電子署名と、立会人型の電子署名があります。
認証局型の電子署名は「認証局」という第三者機関が発行した「電子証明書」を取得し、当事者同士が署名を交わす方式です。
一方、立会人型は、メール、SMS送信、二段階認証などを行い本人確認したうえで、サービス事業者が間に入りサーバー上で行われる署名です。どちらの方法も仕組みの違いはあるものの、必要な基準を満たせば、法的に有効性の高い署名とみなされます。
電子署名された電子文書が効力は、2001年4月に施行された通称「電子署名法」によって、押印した紙の契約書と同等の法的能力を持つことが認められています。
重要な契約などの取り扱いを紙ベースから電子契約に切り替えていくならば、電子署名を活用することを強くおすすめします。
関連リンク:【2021年1月1日施行】労働者派遣契約書の電子化が認められる
電子署名のメリット
電子署名の活用は、押印の廃止をはじめ、テレワークの推進や各種手続きのデジタル化など、社会全体の働き方改革の中に位置づけられます。
たとえばテレワークをしようにも、書類に押印が必要であれば出社しないといけません。そして、押印という手続きを廃止しようにも、各種の書類に実効性を持たせるためには、やはり何らかの形で本人証明がされねばならないでしょう。
このような流れの中で電子的な「実印」の役割を果たす電子署名の有用性がクローズアップされるのです。電子署名を用いることで、これまで紙ベースで行われてきた重要な書類のやり取りの多くを、法的な有効性や信頼性を保ったまま電子データのやり取りに移し替えることが可能になります。
このことはテレワークによる社員の在宅勤務を可能にするだけではなく、仕事のさまざまな場面で恩恵を与えます。
一例を挙げると、紙ベースの書類の使用頻度が減ることにより、印刷やコピーといった雑務が削減され、業務の効率化をなされます。
また、遠隔地の相手と紙ベースでやり取りするには、郵送費と郵送時間という二重のコストがかかりますが、電子データ化すればこのコストが一石二鳥に削減できます。
さらには、押印された原本書類を物理的に保管する必要がなくなるため、保管スペースの確保に悩まされることさえ減るのです。
つまり、電子署名の活用は、業務のデジタル化という大きな枠組みの中で、企業のコンプライアンス性の保護、テレワークなどの社員の働き方改革、コストの削減、職場の省スペース化など、さまざまな積極的効果をもたらすのです。
関連リンク:ただのデータ化ではNG!電子署名法に合わせた電子署名の使い方
今後の脱ハンコと電子署名で契約プロセス改善を
社会全体で押印が完全撤廃されるのは、まだ先のことかもしれません。しかし、国を挙げてのデジタル化が急速に進む中、電子署名の必要性はますます高まってくるでしょう。ぜひ今の内から電子署名の利用を進めてみてはいかがでしょうか。
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