アメリカで電子署名が増えた背景
海外では日本に比べるとコロナ以前から電子署名サービスを導入している企業が多く、アメリカでは2018年の時点ですでに3900億の市場が形成されていたと言われています。
電子署名のメリットの一つに、相手方に原本を送付する必要がないという点があげられますが、アメリカでは今から20年以上前から既に契約書の原本を相手型に送付する手間を省略する動きがありました。
具体的な方法としては、20年以上前は書類の送受信にメールよりもファックスが利用されており、その関係で最終版の契約書の本体はそれぞれの当事者が印刷し、署名欄のページだけそれぞれの当事者が署名をし、相手型にファックスし、これとファックスに原稿になった自社側の署名欄とを最終版の契約書の本体にそれぞれ付け加え、全体を保管する方法がよく用いられていました。
その後、電子メールの普及に伴い契約書の署名欄をPDF化してメールで送る方法に発展し、さらに現在のような電子証明書とタイムスタンプを用いた電子署名の導入に発展していきました。
電子署名について:印鑑にとって代わる電子署名とは?仕組みとやり方について
アメリカの法律面での現状
日本では電子署名に関する法律で電磁的記録である電子データの契約に関する取り決めが厳しく決められています。
アメリカでは、2000年に成立した連邦法であるESIGN法と統一州法委員会全国会議1999年に制定した統一電子取引法(UETA)が電子署名に関連する法律となっています。
統一電子取引法(UETA)はそれ自体は法律ではなく、各州がそれを州法として採用することによって法律となるもので実際には、アメリカの48州、ワシントンDC、米国領ヴァージン諸島、プエルトリコが採用しています。
これらの法律に共通するのは、先に述べたような署名欄をファックスで送る当時の慣行も踏まえて、かつ将来のより発展して電子署名をカバーする観点から、電子署名の定義を広く捉えており、特定の形式や技術を要求しておらず、書面に変わる電子的記録や電子署名の有効性、証拠能力を広く認めるものとなっていることです。
日本と異なる文化
日本で電子署名法の適用に関して議論になっていた、電子署名の当事者型や立会人型のような区別もしていません。電子署名に関しては日本とは大きく異なった文化を歩んでいます。
UETAを採用していないニューヨーク州とイリノイ州の州法もESIGN法やUETAと基本スタンスに変わるところはなく、電子的記録や電子署名の有効性、証拠能力を広く認めるものとなっています。
なおイリノイ州については、本年になって法案が公開されており、近くUETAを正式に採用することになるのではないかと思われます。
アメリカ法下での具体的な要件
上述したESIGN法やUETAを踏まえ、電子契約や電子署名が有効となるためには以下のような点に留意する必要があります。
当事者に当該文書に署名する意思が認められること
当事者に署名の意思がない場合、例えば錯誤や自由意志ではない場合には当然法的効果は否定されます。文書を電子的に署名することについての同意
当事者双方に電子署名をする同意がない場合には法的効果は否定されます。監査証跡があること
電子署名が作成されたプロセスについての記録データは、電子署名の有効性を証明する上で重要となります。
締結された書面のコピーを署名者が受領すること
日本でも契約書原本を当事者が保有するようにアメリカでも書面保有は重要です。
記録が保存され、必要な際に再製が可能であること
契約などの文書の内容を正確に反映した電子的記録が保存され、それを必要に応じて参照できることが必要です。
電子署名が利用できない文書
日本でも借地借家法などで電子署名の利用に制限があるように、アメリカでも家族法や相続法に関連する文書、保険契約、生命保険に関する文書、リコールに関する通知など、上記の法律の適用が除外されているものがあります。
日本での電子化された契約書の取扱についてはこちらをご覧ください:【2021年1月1日施行】労働者派遣契約書の電子化が認められる
より電子署名と法律の関係を知りたい方はこちら:ただのデータ化ではNG!電子署名法に合わせた電子署名の使い方
電子署名でその他留意すべきこと
消費者契約については、消費者が電子契約の利用を理解した上で同意していることを担保するために一定の情報の開示措置が要求されています。
また、アメリカ食品医薬品局(FDA)に提出する書類を電子的に行う場合などについては、別の法令により、その形式や技術について要求が詳細に定められています。
以上のように、アメリカでは電子署名が広く利用されており、法律でも比較的利用しやすいようにルールかされています。
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