CAC(顧客獲得単価)とは
CACとは、「Customer Acquisition Cost(顧客獲得単価)」の略で、「一顧客を獲得するのに費やしたトータルコスト」を表します。
トータルコストは企業の設定によって異なるため、広告費用だけを指す場合もあれば、人件費や代理店販売手数料、その他外注費用までをも含める場合もあります。
できるだけコストを抑えて顧客獲得ができれば、その分利益が大きくなるため、企業はCACを下げようと努力するでしょう。しかし、低すぎれば機会損失をしている可能性もあります。
CACを把握することで、投資すべきマーケティングチャネルの見極めやユニットエコノミクスの算出に役立ちます。
CAC(顧客獲得単価)の種類
CACは顧客の流入経路別に3種類に分けられます。
一口に新規顧客獲得といっても、必ずしも直接的な広告・営業活動によって得た顧客だけではありません。お金をかけたプロモーション活動によって流入する以外にも、口コミや検索といった経路で自然流入する顧客もいます。
例えば、ある期間に実施したキャンペーン広告の費用対効果を正確に測ろうとする場合、全体の新規顧客数から自然流入した顧客数を省かなければなりません。
そのため、CACは、獲得した顧客の経路によってコストを分けて考えるようにしましょう。
Organic CAC
広告などのコストをかけずに自然獲得できた顧客の獲得コストをOrganic(オーガニック)CACといいます。
例えば、Googleなどの検索エンジンやメディアからの流入、SNS・既存顧客からのクチコミや紹介で獲得した顧客が該当します。
CACを計算する場合、自然流入した顧客の獲得コストは見落とされがちですが、Organic CACを考慮に入れないと正しいCACが測定できないため注意が必要です。
Paid CAC
Organic CACに対し、Paid (ペイド)CACは有料チャネルから獲得した顧客単価を指します。
例えば、CMやインターネット広告、セミナーやイベント開催など、顧客獲得を目的として投資したあらゆる施策の費用を含みます。
マーケティングや営業において顧客獲得施策の効果を測るには、CACの中でもPaid CACを指標とするのが適切です。
コストをかけて行うマーケティングチャネルの評価を行う際には、Paid CACを算出することで、施策に対する効果を検証することができます。
Blended CAC
「Organic CAC」と「Paid CAC」を合わせたコストをBlended CACといいます。事業全体の顧客獲得コストを評価するには、Blended CACを算出します。一般的にCACという場合はBlended CACを指していると考えてよいでしょう。
例えば、「顧客数は増加しているものの収益は赤字になっている」という状況で、引き続き顧客数の増加を追求すべきか検討する際は、CACとしてひとまとまりに考えず、Organic CACとPaid CACに分類して検証します。
Organic CACの効率が良いようなら広告費用を下げてPaid CACを抑える、といった対策によってBlended CACを下げることができます。
補足:CACとCPAとの違い
CACに似た指標にCPA(Cost Per Action/Acquisition)があります。意味はCPAと同じく顧客獲得単価ですが、CPAとはコストの範囲に違いがあります。
CPAは主に顧客1件あたりの広告費を表すのに対し、CACは広告費に限らず人件費や運用コストなど、あらゆるコストを加味します。
そのため、CPAはインターネット広告で、1コンバージョンを得るために費やした広告費を測定するために用いられることが多い指標です。
CAC(顧客獲得単価)の算出方法
新規顧客を1件獲得するためにかかったコストを示すCACは以下の式で算出することができます。
CAC = 新規顧客獲得に関する費用の合計 ÷ 新規顧客獲得数
また、CACは1ヶ月/四半期/1年など、目的に応じた期間を設定したうえで算出します。短期間でCACを算出することで、各チャネルの比較を行ったり、改善効果を検証することができます。
例えば、1ヶ月に顧客獲得のためのマーケティング・営業コストとして80 万円をかけ、その月に80名の新規顧客を獲得した場合、その月のCACは1万円となります。
CAC単体のみでは適切であったかどうかは評価は難しく、LTV(ライフタイムバリュー)とあわせて評価するとよいでしょう。
CACとLTVの関係性
LTV(Life TIme Value)とは、「顧客生涯価値」の意味で、一人の顧客が生涯のうちで企業に対してもたらす利益を表します。CACの適切な値は、LTVとあわせて評価します。
LTVの一般的な計算式は以下の通りです。
LTV=平均購買単価 × 平均購買頻度 × 平均継続期間
CAC(コスト)がLTV(利益)を上回っていると、事業の状態が悪いということがわかります。
つまり、CAC/LTVを計算することで、一顧客あたりの収益性を調べることができます。この一顧客あたりの収益性のことをユニットエコノミクスと言います。
LTV/CAC>1の場合は黒字であり、利益が出せている状態ですが、一方、LTV/CAC<1である場合は赤字であり、売れば売るほど損をしてしまいます。
CACとユニットエコノミクスの関係性
前述のとおり、CACの適切な値はLTVとあわせて評価します。一般的に、LTV/CAC(ユニットエコノミクス)≧3であれば収益を継続的に上げられる状態になっているといわれています。
LTV/CAC>1 でも利益は出ているものの、設定した期間が長いと将来的には利益が出せたとしてもキャッシュフローが問題になる場合があります。
逆に、あまりにもユニットエコノミクスが高すぎるとマーケティング投資が弱く、顧客獲得の機会損失を招いているという見方もあります。
この数値は一つの目安であり、事業フェーズによって許容範囲かどうかも考慮する必要があります。
例えば、事業拡大のフェーズであれば、ユニットエコノミクスが3を下回っていても許容し、投資し続ける余地があるでしょう。事業フェーズと照らし合わせて、適切な値であるかどうかを判断していくことが重要です。
CACを改善するための7つ方法
CACを改善する方法はさまざまで、これから紹介するものが主な方法です。
1.ユーザーを調査することでターゲットを明確にする
どのような場合でも、まずは事前にユーザーを詳しく調査することが大切です。
性別、年齢、職業、企業の規模、経営エリア、業種など、さまざまな属性からアプローチするターゲットを正確に特定し、さらにそのターゲットが抱える課題を明確にすることで、より効率的かつダイレクトな施策を実施することができます。
これにより、関連性の高いユーザーにより効果的にアプローチすることができ、CACを削減することができます。
2.マーケットリサーチの活用する
より効果的なマーケティング戦略を構築するために、マーケットリサーチを活用しましょう。
競合他社や顧客のニーズや好みを調査し、市場動向を把握することで、より効果的な広告やプロモーションを行うことができます。正確な情報に基づいた戦略は、CACを削減するのに役立ちます。
3.どのチャネルが最も効果的かを考える
多くの人の目に留まってほしいという思いから、あらゆるチャネルを利用したいと考えがちです。しかし、ここで最も重要なのは「ターゲットの目に留まりやすい方法は何か」です。
いくつかの見込みのあるチャネルを試してみて、CACを確認・比較しましょう。そして、低コストで高いLTV(顧客生涯価値)のユーザーを獲得できるチャネルに絞って施策を展開しましょう。
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4.広告を最適化する
チャネルを絞るだけでなく、広告を最適化することも効果的なアプローチです。
Webマーケティングにおける広告は、主に無料広告と有料広告の2つに分かれますが、それぞれにはメリットとデメリットがあります。したがって、費用対効果の高い広告を選ぶことが重要です。
特に予算が限られている場合は、広告よりも中長期的な手段としてSEO対策などを検討することも有益です。
近年では、顧客一人ひとりに最適化されたパーソナライズド広告の配信が注目されています。MMC(Mobile Marketing Cloud)を利用したパーソナライズドSMS広告配信もおすすめです。
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5.業務を効率化する
新規顧客を獲得する際はさまざまな顧客情報を扱うため、手間や新しい情報を管理する際に発生する新たなリソースもコストとして考える必要があります。そのためこれらを解消できるように業務を効率化させることもCACを削減することにつながります。
そこでSFAやCRMといったツールを利用することで、初期にランニングコストはかかるものの外部委託をする必要が無くなったり一回導入してしまえば自動化が図れるなど、時間的コストの削減にもつながります。
6.CV率を向上する
ターゲットを絞るだけでなく、顧客をより効率的に獲得することもCAC削減には重要になってくるため、CV率を向上させることによってより効率的に顧客を獲得していきましょう。
CV率を向上させる具体的な例として、離脱率の高い自社サイトのページを改修したり、導線を改善するなどといった事が代表的な例です。
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コンバージョンとは?その意味とマーケティング施策でCVRを改善するポイントを紹介
7.ユニットエコノミクスを改善する
ユニットエコノミクス(Unit Economics)の改善は、間接的にCACの改善につながる場合があります。
ユニットエコノミクスは、1つの取引や顧客単位での収益と費用の関係を指します。具体的には、顧客単位の収益、取引の利益率、LTV(顧客生涯価値)などが含まれます。
ユニットエコノミクスを改善することで以下のような効果が期待されます。
CACの削減
ユニットエコノミクスを改善することで、収益性が向上し、利益が増えます。収益が高まると、同じ予算でより多くの顧客を獲得できるため、CACを削減することができます。
LTVの向上
ユニットエコノミクスの改善は、顧客のLTVを増加させる効果もあります。
収益が増えると、顧客が提供する収益も増える可能性があります。LTVが高い顧客を獲得することで、CACを相殺する余裕が生まれ、収益性が向上します。
スケーラビリティの向上
ユニットエコノミクスが改善されると、ビジネスがよりスケーラブルになります。収益性が高くなるため、より多くの顧客を獲得することができ、ビジネスを成長させることができます。
ただし、ユニットエコノミクスの改善が必ずしもCACの改善に直結するわけではありません。ユニットエコノミクスの改善は、ビジネスモデルや収益構造によって異なる影響を与えるため、個別の事例に応じて検討する必要があります。
まとめ
CACは、月・四半期・年と一定期間を定めて計算し、種類に分けながら検証し、それぞれに必要な戦略を練ることが大事です。
CACを下げることができれば、次なる顧客獲得への投資余力が生まれますが、とにかく下げればよいわけではなく、LTVとのバランスが重要です。
正しく理解したうえで事業戦略に活かしましょう。CM.comが提供するSMS送信サービスやメール配信システム、LP広告制作ツールを組み合わせたことで、1/10以上の顧客獲得単価の削減に成功した企業もおりますので、サービスも含めてご相談ください。